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テレパシーで映像作品を完成させる能勢伊勢雄『テレパシー・アート —レクチャーと実験—』開催

2018年10月13日(土) レポート

3日目を迎えた『京都国際映画祭2018』。後半も注目作品&イベントが目白押しです。10月13日(土)、元淳風小学校で行われたのが、能勢伊勢雄『テレパシー・アート —レクチャーと実験—』。アーティスト・能勢伊勢雄さんが、世界的コンセプチュアル・アーティストの松澤宥さんとのテレパシー交信で制作した映像に、ミュージシャンの村岡充さん、近藤良さんがテレパシーで共演。映像作品にリアルタイムで音楽を付け、作品を完成させるというサイキックなイベントです。

まずはMCのおかけんたの挨拶、説明から。これまでもレクチャー、トークを数多く行っていることを話し、2回目から協力いただいて最多出場と能勢伊勢雄さんを紹介、これまでの試みを振り返ります。そして能勢さんから、今回の説明が。「テレパシーは人間が持っている能力だと気付かされたのは、松澤先生との関わり」と切り出し、松澤宥さんに関するスライドが流されます。

まず松澤さんの写真が映し出されたあと、「(松澤さんは)1964年にobjetを消せという天啓を受けた」と説明。松澤さんはobjetとは作品、鑑賞者と作家の内面の触れ合いを阻止しているのがobjet=作品ではないかと唱えたそうで、objetがなくなれば、鑑賞者が作家の内面に到達するのではと考えたとのこと。松澤さんの当時の活動について語られたほか、実際の作品もスライドで映し出されました。「頭の中で描いたもの、それが作品ということ」と能勢さん。実際にスライドを使いながらの作品説明も行われます。途中には草間彌生さんが松澤さんをリスペクトしていたというエピソードも。かなり難解な作品、解説などもありましたが、けんたは「作品の解釈は皆さんにおまかせしますということ」と補足、さらに現代美術に関して、日本は思っている以上に早くからスタートしているということも歴史とともに説明します。

松澤さんについては、ほかの時代の展覧会や作品などもスライドで紹介。2006年に亡くなられた際の葬儀で行われたパフォーマンスの画像も映されるなど、その人生、歴史を振り返りました。さらに松澤さんが「objetを消せ」と提唱していたので、作品を部屋に押し込み、入れないように釘で打ち付けていたというエピソードも披露。松澤さんの没後、能勢さんがその部屋に入った際の貴重な作品も見ることができました。

能勢さんは今回の作品のキーともいえるテレパシーについて、松澤さんからかかってきたという電話のやりとりを披露。「objetを消すことで1度目のブレイクスルーができたが、2回目のブレイクスルーがしたい、何かアイデアはないか」と聞かれたそうで、あとはテレパシーしかないと能勢さんが提言したとのこと。「objet、間が無いんなら、テレパシーなら直につながるんじゃないですか」と電話口でつい言ってしまったと振り返り、松澤さんは一瞬絶句していたものの、やってみようとなったとのこと。

続いて、今回の作品「Tlepathy Art」は松澤さんからテレパシーによって届いてきたイメージを映像化していること、一部ノイズが入っている以外は無音になっていると説明がありました。ここで、映像に音をつける村岡さん、近藤さんが紹介され、けんたからこの現場でテレパシーによってサウンドトラックを完成させること、方法は2人が別々になって演奏、録音したものをミックスして、それが演奏として成り立つのかという試みであるという説明がありました。

まずストップウォッチを2人が同時に押し、スタート時間を設定。近藤さんは会場を出て別の場所へ向かいますが、距離が離れているので、お互いの音はまったく聞こえません。この状態で作品が流れる15分間、互いに演奏を続けます。映像がスタートするとともに、会場では村岡さんがギターをプレイ。図形や文字が描かれた映像がランダムに映し出されていくなか、村岡さんのギターとコンピューターが様々な音世界を表現し、15分間はあっという間に過ぎていきました。

近藤さんが戻ってくると、会場からは拍手が。離れた場所で近藤さんが奏でていたサックスの音をミックスし、もう一度作品が映し出されるはずが、なんと音が録れていないかも…というハプニングが! 村岡さんと近藤さんが録音できているか確認を続けるなか、けんたが「(トークで)つないでますよ!」と話すと、笑いが起こります。会場からは「松澤先生が消したんじゃ?」という声も上がりますが、無事に録音できていたことがわかり、ひと安心。改めて作品と音が流されます。二人の奏でる音楽は、あるときは溶け合い、またあるときは離れそうになりながら、映像にぴったりとフィット。離れた場所で奏でられていたとは思えない演奏を聞かせ、作品に新たな広がりを与えていました。

鑑賞後、けんたは「目の前にいて演奏していたような雰囲気を感じた」とコメント。キーとか強弱の打ち合わせはしていないのか、と質問しますが、2人は何もしていないと答えます。近藤さんは「テレパシーが合った瞬間に気持ちいいところがあった」と話し、村岡さんは「テレパシー、バリバリ感じました」と笑顔。能勢さんも2人の柔軟性を称賛しました。けんたは「みなさんにもテレパシーが届いたと思う、能勢さんには来年もレクチャートークをしていただきたい」と話し、イベントは終了しました。

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