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中島貞夫監督、「京都映画大賞」受賞のニュースも発表された 『多十郎殉愛記』ワールドプレミア上映

2018年10月14日(日) レポート

4日間に渡り開催されてきた京都国際映画祭2018。クロージングを飾ったのは、『多十郎殉愛記』。日本映画界の巨匠・中島貞夫監督が20年ぶりにメガホンを執った時代劇として、すでに注目を集めています。「殺陣の魅力」の根源を探り、演者の魅せる極限のパフォーマンスや、1本の日本刀に込めた「男の情念」を描いています。中島監督の経験全てを次世代の若者、役者、スタッフに継承した作品となっています。10月14日(日)、よしもと祇園花月でプレミア上映が行われ、中島貞夫監督、主演の高良健吾さん、木村了さんが舞台挨拶に登壇しました。

MCの清水圭に呼び込まれた登壇者の姿がステージに現れると、上映ごとあって、映画の感動を伝えるかのような大拍手が場内に響き渡りました。これを受けて高良さんは、「ほんとに大きな拍手をいただいたので感極まって、うれしいです。監督、スタッフの思いが詰まった映画を、京都でまず最初にお披露目できるのがとてもうれしいです」と率直に述べました、次に高良さん演じる多十郎の弟役・数馬を演じた木村了さんが「京都でこの作品を初お披露目できたことに、すごく感動しています。僕たちの手にあったものが、お客さんの元に今日から羽ばたいていく瞬間に立ち会える、素敵な時間を過ごさせてもらっている」と喜びを口にしました。

映画祭のクロージング上映に選ばれた気持ちを清水が中島監督に訊ねると、「京都というのは映画を作り続けてきた街です。日本映画の故郷」と言い、これまでも京都国際映画祭に参加してきたので「作品を発信しなければならないだろう」という思いを抱えていたのだそう。映画祭開催5年目にして出品できたことを「『やったー!』という気持ちでいっぱいです」と胸の内を明かしました。

この監督の思いを受け止めての気持ちを聞かれた高良さんは、「まず中島貞夫監督の現場を踏めるということが自体が幸せなこと。踏みたくても踏める現場ではないので。しかも監督のオリジナル脚本で時代劇。これはもう運が良いとしか言いようがない。個人的には30代最初の主演だったので、いつも以上にチカラが入った」と渾身のチカラで臨んだと話します。木村さんは「中島監督の現場に挑んだ時に、これはもう命懸けで数馬という役を体現していかなければならない」と毎日緊張しながら撮影に入っていたのを振り返りました。

今作は高良健吾さん、木村了さんをはじめ、ヒロインには多部未華子さんを、監督補佐として気鋭の熊切和嘉監督が付き「若いチカラ」が支えています。これについて中島監督は「チャンバラ映画を、若い俳優さんでやりたかったんです。(とは言え、)孫のような年齢なんですよね。はじめは話が通じるかな、と(心配に)。高良さん、木村さんをはじめ、みんなすごく素直。そして、ものすごく熱心ですね。特に今回チャンバラの勉強をしてもらって。殺陣師が寄ってたかって若手を鍛え上げようとしたんですけど、これが見事に成功して。ここまでやってくれるだろうと思わなかったんです」と完成度に自信をのぞかせ、「110点満点ぐらいのでき。これからの京都のチカラになったな」と次世代へのバトンが渡せたと手応えを見せていました。

中島監督の現場で高良さんは、「殺陣とは思いやりだ」と相手の気持ち、関係性でできていくものだと学んだそう。そして殺陣の稽古を経て、「早さとかではなく、刀をなぜ抜いたのか。なぜ斬るのか、この場所で戦うのか」と、作品テーマを全身で感じ取理、刀を抜いた武士の奥側の精神性を描いたものだと映画の魅力PRに繋げていました。木村さんは劇中では刀をあまりうまく扱えない役柄でしたが「僕も高良くんと一緒に練習したんですよ」とお客さんに一生懸命さをすかさずアピールし、笑いを誘っていました。

改めて現場を振り返った高良さんは、「幸せな時間でしかなかった。京都に居た1ヶ月半は、幸せでしょうがなくて。(撮影後は)“多十郎ロス”がすごかった。『京都のあそこら辺って住みやすいのかな?』と家賃を調べたり、不動産屋の前で止まっちゃう」と作品への深い愛を表現していました。木村さんも「クランクアップしてくれるな!」と願うほどだったと言います。

そんな撮影現場での中島監督の演出は、「短くポンポンと言葉がくる。けれど、とても重いし豊かだから、その演出を受けられたのは、めちゃくちゃラッキーだったな」と高良さん。横で頷きながら木村さんは「やる直前に端的に言ってくれるので、すっと入ってくる。テスト(撮影)で、次本番なんですけど、テストでうまくいっちゃうと『OK! じゃあ次いこう!』って本番まだ撮ってないのに」と監督なお茶目なエピソードを披露しました。「そこがかわいいじゃないですか」と清水はフォロー入れながら、事前の打ち合わせ時のエピソードを。みんなが着席している所へ中島監督が登場し、目の前にいるのに気づかず、「木村くんは来ていないの?」と質問したんだそう。これを聞いていて思いついたかのように高良さんは「(スーツが)黒だからじゃないの?」と発し、会場は大笑いです。

これから観る方への高良さん、木村さんがPRします。まずは高良さんが「シンプルに「時代劇って面白いぞ」っていうことだと思います。監督が今、時代劇を撮って何かを届ける。それに時代劇を選んだ意味は絶対ある。やたら滅多ら斬らずに、刀を振ること、斬ることにちゃんと意味がある時代劇もある」ことと、「月9で時代劇」ぐらいに浸透し、「みんなが興味を持ってくれたらな」と映画の広がりを、木村さんは「もう1度時代劇ブームが、この映画をきっかけに起きたら」と時代劇ファンの増加を願いました。これに中島監督は「泣けることを言ってくれる」と大喜びです。

タイトルの『殉愛』に込めた思いを聞かれた中島監督はニヤリとしながら「チャンバラの中で愛を叫ぶというのかな。生きるか死ぬかの状況ではじめて愛しているのか/愛していないのかわかることだと思うんですよね」と自論を展開。「生きるか死ぬかは人間にとって1番大きなドラマはドラマですよね。そうするとチャンバラは時には泣けて、時には笑えて。ドラマのほんとの面白さはチャンバラにある」と力説し、タイトルに込めた想いに代えました。

ここでビッグニュースです。京都市が「京都映画大賞」を新設し、その第1回受賞者が中島貞夫監督であると発表されました。長年に渡る映画監督としての活動、京都での映画祭開催、後進の指導に尽力されたこと、映画都市・京都の振興・発展に貢献してきた功績を称えられ贈られるものです。京都市長・門川大作さん、寺田一博市会議長が登壇し授与式が行われました。表彰状と副賞の「二条城二ノ丸御殿大広間での記念撮影」権と、1年間の入場証が中島監督に手渡されました。

門川市長よりお言葉をいただきます。「まずは『多十郎殉愛記』、感動いたしました。映画の聖地・京都でもうひとつ中島監督に頑張っていただいて、京都全体でいや、オール日本で時代劇を大事にしていかないかんなと実感しております。中島監督が59年に渡って素晴らしい創作活動を展開し、多くの人を育てていただいた。映画人の生きた方の哲学、そうしたことも伝えていただけたら」と中島監督のますますの活躍を願い、お祝いの言葉としました。

最後に中島監督からご挨拶です。本日ワールドプレミア上映ができた喜びを口にして、「若い人たち映画を作るのチカラは着実に伸びております。ただ、その中でチャンバラ・時代劇はちょっと遅れているなという感じ。しかし京都というのは映画を作り出してから、時代劇をたくさん作ってきた所です。その京都から時代劇が消えてしまってはいけない」と気持ちを新たにしました。そして続けて中島監督は、「京都には映画のお化けがいるという監督がいるんですけど。そういう方々の思いを我々が背負って、京都から時代劇、もっともっと面白いチャンバラが作れたら。それが我々の務めだという気持ちで、何とか老いの身に鞭打ちながらやってきた成果が今日の一つの形でございます。みなさんの拍手を聞いているだけで、涙が出てきます。本当にどうもありがとうございました」と感無量のコメントを残しました。

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