ニュース全ニュース

自称「世界最高齢」のアニメ自主創作集団「G9+1」と東京芸大大学院「アニメーション・パレット」のコラボ上映!

2018年10月12日(金) レポート

2017年は国産アニメ誕生100年ということで多くのアニメ関連の催しを行い、京都国際映画祭では、新設のアニメ部門で「G9+1」(自称「世界最高齢」のアニメ自主創作集団)の上映会をしました。

今年は10月12日(金)に大江能楽堂にて、ベテランと若手のアート・アニメを堪能していただく、「G9+1」と東京芸大大学院「アニメーション・パレット」のコラボを行いました。注目は、8月に寺山修司賞を受賞した「G9+1」の一員で日本アニメーション協会会長の古川タク氏の新作『ヒトコト劇場』初上映です。ほかにも、『タコ船長とまちわびた宝』『Jungle Taxi』『パカリアン』『tokyoSOS』『tokyo未完成』が上映されました。

上映会には『ヒトコト劇場』の古川タク監督、和田敏克さん(G9+1)、「アニメーション・パレット」の面高さやかさん、アニメーション・パレット『タコ船長とまちわびた宝』の飯田千里監督がゲストで来場し、上映の前にMCの清水圭とトークを繰り広げました。

まず、清水圭が登場し、大江能楽堂が今年で建立110年であることを説明。開場した明治41年の出来事などを説明し、その歴史の古さを味わいました。

そして4名を招き、まずはコラボイベントのきっかけを訪ねました。「おもちゃ映画ミュージアムの企画で短編映画を上演しようということになりました。『G9+1』は1960年代からアニメーションを作っている大ベテランで、彼らと10代、20代の若手のコラボです。短編アニメはとても自由なアートな世界なので、年齢に関係なく面白がって遊んでいる感じを紹介できたらと思います」と和田さん。

古川さんは「G9+1」についてご紹介し、「『G9+1』を始めたときは上が60代でした。今は15年目くらいになり、一番上が83歳です。僕はどこに行っても長老と言われるのですが、このグループだと真ん中あたりでうれしいです(笑)。『G9+1』では打ち合わせと称して必ずどこかで1杯飲むとか、そういうことが楽しくてずっと続いています」と笑顔で語られました。

一方の「アニメーション・パレット」活動について尋ねると、「まだ若いグループですが、いろんなところで上映活動をしています」と面高さん。このコラボイベントにあたって飯田さんは「大先輩とのコラボで、小学生の時にフルカワタク先生の本をとかを見ていたのですごく緊張しています」とのこと。

今回は「アニメーション・パレット」から『タコ船長とまちわびた宝』と『パカリアン』『Jungle Taxi』の3作品を上映します。「『タコ船長とまちわびた宝』は昔ながらのタッチで描いた海賊たちの切ないお話ですが、海賊冒険物語です。『Jungle Taxi』はハードボイルドで、ずっしりと味わい深い作品です」と飯田さん。『バカリアン』については「人形が動くアニメで、ホラーコメディです。俳優の斎藤工さんが声を担当しているところが見どころです」と面高さん。清水も「3作品とも見事にテイストが違うので、楽しんでもらえると思います」と期待を寄せました。

上演後には3作品のバラエティの豊富さがまず話題に上り、「それぞれの個性が出ていた」と面高さん。飯田さんも「『アニメーション・パレット』はそれぞれ色が違うという意味があるんです」と付け加えました。古川さんによれば『Jungle Taxi』は教え子が作られたとのこと「昔から面白い作品を作っていました。なかなか頑張っていますね」とエールを贈りました。和田さんも「『Jungle Taxi』は一風変わっていて、物語を解体して見せる詩的な作品ですね」と話していました。清水がノンバーバルについて尋ねると「言葉を入れなくても伝わるなら、入れなくてもいいと思ってます。映像はいろいろと想像して観ていただくと、こっちが伝えたいこと以上に伝わるのではないかと思います」と飯田さん、その意図を明かしました。

続いては「G9+1」の2作品の上映です。まず、「G2+9」についての解説があり、「メンバーの中には常盤荘にいらした鈴木伸一さんや、カールおじさんを描かれたひこねのりおさんなど、どこかで絵を見たことがある作家さんが集まって、お題に沿って好きに作っている」と和田さん。『tokyoSOS』と『tokyo未完成』ともオムニバス形式で1分~1分半の作家それぞれの映像を繋いだもので、著名な音楽家とのコラボレーションにもなっています。そして地球温暖化をテーマにした『tokyoSOS』と、“意味がありそうで何もない”という『tokyo未完成』が上演されました。なお、『tokyo未完成』の音楽は作曲家でジャズピアニストの島健さんが作られたそうです。

上映後、「だいぶ大人な作品ですね」と清水。和田さんも「改めて見ると変わった映画ですね」と笑いを交えてお話されました。そして若手の面高さん、飯田さんからご覧になっての感想を訪ねると、「『G9+1』の皆さんはフィルムからスタートされて、今のデジタルの技術も吸収されていてすごいと思います!」と飯田さん。デジタルでは作り方が全く異なり、「フィルムの頃はどんな仕上がりになるか出来上がるまで分からなかったので、感覚を頼りに作っていました」と和田さん、当時の製作風景などを振り返りました。また、『tokyo未完成』でのトリビアでも盛り上がりました。

最後は古川タクさんと作曲家の桜井順さんによる『ヒトコト劇場』を上演。桜井さん遊び感覚で十数秒の音楽とアニメの作品をつくっていたところ、気が付けば40分の作品になっていたそうで、社会や政治風刺など様々なことが繋がっている作品と古川さん。清水は「桜井順さんと古川タクさん、お二人合わせて160歳の作品です」と紹介しました。

上映後、「スパイスが効いたものを見せていただきました。表現が自由で、肩の力が抜けていて、勉強させていただきました」と面高さん。言葉遊びの作品も多く、古川さんによると「作家の野坂昭如さんが脳梗塞で倒れたあと、桜井さんが野坂さんのリハビリのために作られたものなんです。ダジャレとか言葉遊びのようなものは、すべてそうです」と秘話も明かしてくれました。エスプリも効いた大人の遊び感覚たっぷりの作品だけに、清水も「深夜にテレビとかで流してほしい」とリクエスト。和田さんも「これはクセになりますね。ずっと見たくなります」と絶賛でした。

コラボ上映会を終えて「楽しかったです。アニメーションじゃないとできない自由な遊び心がありました」と和田さん。「古川さんも、若い人たちから年寄りまで、アニメーションを作っている国はないので、そこがおもしろいと思いました」とご感想を。面高さんも「歴史ある大江能楽堂さんで作品を上映するというのは初めての経験だったので、とても貴重でした」と噛みしめるようにお話され、飯田さんも「機会があれば、また、ぜひ来たいなと思います」と満足気な様子でした。

  • Facebookでシェア
  • Twitterでシェア
Close