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映画が、子どもたちが刺激をくれる2つのプログラムを実施! 「京都国際子ども映画祭/京都国際インディーズ映画祭 連携企画」

2018年10月13日(土) レポート

開催3日目の京都国際映画祭。大江能楽堂では「京都国際子ども映画祭/京都国際インディーズ映画祭 連携企画」として、2部構成のプログラムからスタートしました。

MCとして舞台の現れたのは、清水圭。「みなさんがお越しの大江能楽堂は、今年で建立110周年」であるのを告げ1908年(明治41年)に建てられたと言い、建物の歴史の重みを表現しようと「映画『ラスト・エンペラー』で有名な溥儀が清の皇帝に即位した、そういう時代でございます。夏目漱石さんが『三四郎』を書かれ、「味の素」が登録商標された年」と歴史的事実を挙げます。「そんな建物でございますが、お手洗いは見事にウォシュレットでございます。」とオチを付け、お客さんもくすり。清水は他にも、昭和を代表する喜劇役者の伴淳三郎さん、名女優・沢村貞子さん、シンガーのディック・ミネさんが生まれた年という情報も添えていました。

まずは、「京都国際インディーズ映画祭」プログラムからはじまります。清水がゲストの、同映画祭の代表・広瀬之宏さん、ペナルティを招き入れます。広瀬さんは、「この能舞台で1番最初に映画を上映させていただいたのが、私たち「京都国際インディーズ映画祭」なんです」と少し誇らしげにご挨拶。清水が「そうですか! そうしていただけたから、今、我々もここでやらせていただいている」と基礎が広瀬さんらによって作られた事実にビックリしていると、「どやっ!」と広瀬さんはますます自慢げです。6年ほど前が初上映で、京都市内の方でもほとんど大江能楽堂の存在を知らない人が多かったそう。そうそうとばかりに清水は「ここへタクシーで来る時、タクシーの運転手さんもご存知でなくて」と口にすれば、ヒデも「結局、住所を言うしかなくて」と同意。さらに清水は「こんなすごい所で映画祭するんですか、楽しんで来てください」とお客さんと思い込まれていたネタで、会場から笑いを引き出していました。

おもむろにヒデが「そんな中ね」と切り出し、ワッキーが行きの新幹線で財布を落としたと明かします。清水が「ワッキーがテンション低いんですよ。勘弁してください」と代わりにお客さんにお詫び。ヒデは「普通、それを取り戻そうと芸人は、はしゃぐんですけど」と相方の意気消沈ぶりを嘆きます。ワッキーはボソボソと「今日はもう僕は……」とつぶやき落ち込みぶりを訴えます。広瀬さんだけが「(自分の経験上、)映画祭で無くした人は、出てきます!」とフォローして励ましていました。

今回上映されるのは、セリフなし、風景のみが映し出されるも強いメッセージを持った『10424』、太平洋戦争末期、何も知らずに兵器製作に従事させられた少女たちの事実を追った『女学生と風船爆弾』の2本です。広瀬さんは「『10424』は観ていただくのが1番」と紹介し、「私たちが上映しているインディーズでは娯楽映画はなく、私たちの審査基準なんですけど、教育的価値があるかどうかを基準にしているんです。何を言いたいのか、その奥までを考えてもらえる作品を選んでいる」とモットーを語り、『10424』はまさにそれにかなった作品で、「説明をしなくてもわかる」と太鼓判を押します。『女学生と風船爆弾』について広瀬さんは、劇場上映される機会が少なかったと前置きし「簡単な話、儲からないから。でも、お金に映画を換算するのではなくて、想いを伝えたいという作品になっていると思います」と、作り手の強い意志が詰まっていることをお客さんに主張しました。客席には、“風船爆弾”を扱った作品が上映されると知り、当時、紙製の風船爆弾作りに携わり「(和紙の)糊貼りしてました」という方も来場。これには清水、ペナルティのふたりにも驚きを隠せませんでした。

作品鑑賞後、『10424』についてワッキーは「セリフもないのに、最後までちょっとズシッときましたね」とポツリ、それを受けて清水は「実態は何も映ってないのに」と応じ、同じ気持ちを抱えているかのようでした。とある数的な事実が突き付けられるのですが、「知らないで過ごしてきたんだな」とヒデも感慨深そうでした。戦争の暗部を切り取った『女学生と風船爆弾』は、ヒデが「(当時の女学生たちが)今語ることによって、“平和の風船”を飛ばしている。今日は、我々が観て感じたことを伝える作業、その風船を飛ばしていかなきゃいけないんだろうなと思いました」と印象に残るまとめをし、これには広瀬さんから「格好のいいまとめ方しましたね」とお褒めの言葉が。清水も「映像を使って戦争の事実を伝える」意義をひしひしと受け止めていました。最後に広瀬さんは「自分の頭で間違っててもいいから、自分で考える癖をつけて欲しいというのが、僕たちインディーズの想いなんです。自分に責任を持った生き方を、こういう映画を観て感じていただけたら」と願っていました。

第2部は、「京都国際子ども映画祭」によるオーストラリア映画『12歳の女の子についての入門書』の上映です。こちらは、同映画祭ワークショップ参加者の子どもたちが生吹替に挑戦します。舞台には出演者の子どもたちがずらり。「京都国際子ども映画祭」は「子供による、子どもの映画祭」では司会・進行、運営、審査なども行なっていると聞き、たまらず清水は「おじさんたちの司会はどう?」と確認。「素晴らしいです!」と答えてもらい、ひと安心です。生吹替をするとあって、「かなり練習したでしょう? 大丈夫?」と清水。子どもたちは「多分、大丈夫」「バッチリ!」とハキハキ答えるので、清水は「みんな大丈夫やろう? このおじさん、大丈夫ちゃうねん」と財布のことで頭がいっぱいのワッキーを指し、お客さんも大爆笑です。

映画の内容は、多感なお年頃の少女たちの実情に迫るもの。ヒデは「娘が10歳。あと2年でって考えると、観ておきたいですね」と興味津々で鑑賞に入ります。登場する個性豊かな少女たちのキャラクターに合わせて、子どもたちが声を当てていきます。ワークショップ6回、補講で5回、今日に備えて2回の練習を経ての仕上がりは、まるでプロの方が担当しているかのように滑らか。清水らをはじめ、お客さんをすっかり魅了してしまいました。

上映後、子どもたちの完成度の高さに感服した清水は「正直、おじさんビックリしてんねんけど、想像以上にグーッド!」と、子どもたちを讃えます。やり遂げた子どもたちもキラキラした表情で満足そうです。お客さんからも大拍手が起こりました。ヒデは「まあ、うちの相方は噛みますからね」とワッキーに向けると、「僕の代わりに相方になってもらいたいくらいですよね」といじけた口調に。加えて清水は、子どもたちが映像の撮影も行っていると聞き、「映像できあがったら、来年の京都国際映画祭に出品してみてよ」と、次回の参加にも期待していました。もしかしたら、来年度の映画祭の上映で、子どもたちに会う日が来るかもしれません。

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