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「京都国際映画祭2018」でヨーロッパ企画の映画3本立てをプログラム上映!

2018年10月12日(金) レポート

10月12日(金)、大江能楽堂の最終上映は「[祇園天幕映画祭]ヨーロッパ企画の京都ニューシネマ総集編」でした。上映作品は『ノックは3回、クリックは2回』(監督:大歳倫弘)、『硬派探偵~いつも何かを覚悟する~』(監督:黒木正浩)、『MAGIC TOWN』(監督:池田千尋、演出:山口淳太)。ヨーロッパ企画の永野宗典さん、黒木正浩さん、演出の山口淳太さんも登壇し、MCの清水圭とともにトークも繰り広げました。

まずはヨーロッパ企画の説明から。「ヨーロッパ企画とは同志社大学の演劇サークルを母体に発足した劇団で、結成して20年です」と永野さん。清水とは先輩、後輩の関係です。「基本は劇団をやっていて、毎年全国約10カ所の演劇ツアーもやっています。ツアーをしていない間に映画を撮る活動をしたり、テレビ番組も自分たちで撮って納品したりと、制作会社のような側面もあります。フレキシブルな活動をやっています」。黒木さんは元芸人。baseよしもと時代に劇場に出演していたそうで、当時のエピソードで盛り上がりました。カメラマンもされている山口さんは「映像制作チームの一員です」と自己紹介されました。

まずは、永野さんも出演している『ノックは3回、クリックは2回』とヨーロッパ企画のメンバー、石田剛太さん主演の『硬派探偵~いつも何かを覚悟する~』が続けて上映されました。『ノックは3回、クリックは2回』は10分程度の短編作品で、劇団の中でも若手の作・演出家である大歳倫弘さんの監督作。永野さんは「引きこもりのYouTuber」という役で出演、彼を取り巻くホームコメディです。『硬派探偵~いつも何かを覚悟する~』は「怒号しかない、主人公がずっと怒鳴っている映画です」と黒木さんからご説明がありました。

上映後に清水は「2本ともカラーが違って、しっちゃかめっちゃかですね!(笑)」と堪能した様子。永野さんによると『ノックは3回、クリックは2回』は実話をもとにして作られたそうです。山口さんは2作品ともカメラ撮影を担当。「1本目は役者さんの表情がしっかり撮れる映画にしようという方針でした」と話しました。ハードボイルド・コメディともいえる『硬派探偵~いつも何かを覚悟する~』では、「劇中でカメラを回すテレビ局のディレクターの役がへらへらして面白かったですね」と清水。黒木さんに聞くと「内側にある世の中への怒りを台本に書いて、言いたいことを言った」作品で、現在パート4まであるそうです。永野さんいわく「黒木さんの怒りの数だけ作品がある」とのことでした。

3作品目は山口さんが監督のドキュメンタリー映画『MAGIC TOWN』です。69分と長編で、映画監督の池田千尋さんが出身地の静岡県袋井市で子どもたちと共に映画製作に打ち込んだ日々に密着しています。「子どもたちは小学1年から中学3年生までいて、学年混同のチームに分かれて映画を作ったのですが、みんなポテンシャルが高すぎて日々ケンカが絶えませんでした。でも、とても純粋な創作の現場を目の当たりにして、大人が考えるきっかけにもなりました」と山口さん。黒木さんもカメラマンで参加し、「子どもたちがすさまじかったです!」と当時を振り返りました。

静岡県袋井市出身の映画監督、池田千尋さんに袋井市から「子どもたちと映画を作ってください」という依頼があったことから始まったプロジェクト。2016年の夏は「袋井市のPR」というお題で子どもたちがチームに分かれて短編映画を製作しました。偶然、同じ中学校の生徒が集まったチームは、コミュニケーションがうまく取れず、なかなか意見を言い出せません。それぞれに思いを抱いているものの、声に出して伝えようとしない姿に、周囲の大人たちもいら立ちを隠せません。小学生の学年混合チームでは、子供たちのフォローで参加した大人が一人の男の子をかばったことから、残るチームメイトが不満を大爆発。チーム崩壊の危機に見舞われました。様々な衝突やハプニングを繰り返しながらもチームで一つの映画を撮ろうと奮闘する子どもたち。自分の内側にあるものをどうやってアウトプットするか、どうやってチームメイトとコミュニケーションをとるべきか、映画製作を通じて恐らく思いもよらない「表現」という難関にぶち当たった子どもたちが、ちょっとしたことをきっかけにその壁を突破します。その瞬間、表情がみるみると輝き、見違えるように明るさを取り戻していきます。本作では、そんな生き生きとした姿を克明に捉えていました。

上映後、「疲れましたね…(笑)」と率直に語る清水。「いろいろと力が入ってしまって。俺やったら、あの場面ではどうしているかなとか、考えました。ここに出てくる子どもたちがすごいなと思ったのは、映画製作というどこが到達点なのかわからないことに取り組んでいること。見本がないものに挑んでいる姿はすごかった」と続けました。永野さんも「大人でも難しかったことをやってのけましたね」と感心していました。

「ドキュメンタリーは映画ジャンルの中でも難しいと思います。作品といよりも被写体に感情移入をしてしまうから。そういう点で作り甲斐はありましたか?」と清水が山口さんに尋ねると、「本当にやらせがなくて。何が起こるか分からない状態で撮影していました。他の班でもいろんな事件が起こったのですが、『MAGIC TOWN』では一番見てほしい3チームをピックアップしました。中学生になると急に自意識が芽生えてコミュニケーションができなくなるとか、小学生は言いたいことを言うけどまとめられないとか、いろいろありましたね」と回想されました。

子どもたちの切り替えの早さや池田監督の驚くべき包容力など見どころ盛りだくさん、「最初はどうなるかと思いましたが、69分じっくり見ました」と清水、満足気な様子で「趣向の異なる3作品をありがとうございます!」とお礼を伝えました。永野さんは「これからも映画を撮っていきます。でも、基本は劇団でコメディをやっているので、よかったらそちらも観に来てください」と最後にご挨拶されました。

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