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「内田裕也ロックンロールムービーvol.5『転がる魂・内田裕也 ザ・ノンフィクション』」は、 40年来の親交から誕生したコラボレーション!

2018年10月14日(日) レポート

映画祭最終日の10月14日(日)、よしもと祇園花月のプログラムは「内田裕也ロックンロールムービーvol.5『転がる魂・内田裕也 ザ・ノンフィクション』」からのスタートです。内田さんと40年来の親交がある崔洋一監督が、内田さんがライフワークにしている『NEW YEARS WORLD ROCK FESTIVAL』へ取り組む姿に、リハーサルから日常まで1年間密着。ナレーションを樹木希林さんが担当し今年の7月にテレビ放送、それを再編集し1本の映像作品にしたものが上映されました。上映後、内田裕也さん、崔洋一監督が舞台挨拶に駆け付けました。

MC担当のアッパレード木尾が呼び込むと、内田さんが影響を受けたエルヴィス・プレスリーの楽曲に乗せ内田さんと崔監督が登壇。客席からは盛大な拍手が鳴り響き、「裕也さん!」という声援も飛び交いました。「今日は忙しい中、ようこそいらっしゃいました。ありがとうございます」と内田さんからご挨拶。実は上映中、お客さんと鑑賞していたそうで、内田さんは「照れながら拝見させていただいて。なかなか日本では珍しいドキュメンタリーと手前味噌ながら感心しました」と自身の出演作を評しました。一緒に観ていた崔監督は「すいません、(上映中に)時々、変な声を出していたのは裕也さんと私でございます」とまずはお詫びし、改めて色んな思いが詰まっているのを見つめながら「ある種のクールさを持って撮っていたものを、不思議な感覚で、今日観客のみなさんと一緒に観れたことを誇りに思います」と感想を述べられました。

映画祭スタート時から毎年参加し、今回で5回目となる内田さん。これまでを振り返って「最初の頃は戸惑っていましたけど、やっているうちに愛着が湧いてきました。さすが京都、文化の街だと再認識しました」と懐の深さを体感されてきたそう。少し声を出しにくそうにしながらも「1杯飲んだら治る」とジョークを飛ばし、崔監督も「夜の時間帯だったら、バッチリですよね。みなさんと1杯飲みながら」とコメントし笑い合っていました。そして内田さんは「どの映画館で観るよりも、いつも楽しみにしている。今日は監督も俺も十分楽しめたと思います」と素直な気持ちを吐露し、「先日、他界しました樹木希林さんが出ていましたので、ちょっと動揺を隠せなかったですけど。また一緒にスクリーンで観てくれて、うれしかったです。ありがとう」と、集まってくれたお客さんたちに改めて感謝の気持ちを伝えていました。

「裕也さんとはもう40年近い関係性なんですけど」と切り出し崔監督は、その関係性を「妙な言い方なんですけどね、“内田裕也”という地獄のような“蟻地獄”」と独自の言い回しで表現。内田さんが主演した1983年の映画『10階のモスキート』で監督を務めて以来、親交を続け「音楽の最前線、とりわけライヴの中継をやってみないか?」と“ワールド”がつく前の『ニューイヤーズロックフェスティバル』で7年、中継番組の演出の1人として参加していたというエピソードを披露。そういった「裕也さんとのコラボレーションを楽しみながら、苦しみながら来たということ」が、今回のドキュメンタリーの大きなモチーフになっていると明かしました。『10階のモスキート』を撮り終わった頃に「もう1回何かやりたいですね」という話をしていたと崔監督は告げ、40年近く経った今、こうして約束を果たせたことに感無量な様子でした。

タイトルについてのお話に移ります。当初は「内田裕也の遺言」を崔監督が提案したのですが、内田さんからNGが。「1人のロックミュージシャンの軌跡を、個人史を越えるような時代の証言として残したい気持ちが強かったんですね」と最初の案を推したかったのですが、ふと思いついた「ザ・ローリングソウル(転がる魂)」を再提案し採用へ。内容を鑑みて崔監督は「最もふさわしいタイトルになったかな」と満足げに語っていました。

MC木尾が「今後の構想」について訊ねると、内田さんは「そんなことはベラベラしゃべらないから」とピシャリ。崔監督は「これが“裕也節”です」とうれしそうにフォローします。そして内田さんは、「今日拝見して、とても面白かった、古い友人が出てきて。僕はあまりメジャーで成功したことがなかったので、とても感無量で観させていただきました。これはまた、今後の俺のロックン・ロールライフにとても大きなパワーとなって繋がると確信しています。ありがとうございました」と溢れる想いを言葉にしました。そして崔監督も「裕也さんが今仰ったようにですね、これから先、内田裕也と崔洋一はどういうことになるんだろうか、全くわかりません。でも、わからなくていいじゃないか」と、今後の構想は未定としました。また、過去に内田さんから受けたアドバイスに「ロックっていうのは評論するもんじゃない、感じるもんだよ。その時の時代の流行り・廃りはあるんだけども、それを越えるような普遍性があるんだぜ」というものがあったとし、「裕也さんの、音楽に対するひとつの答えではないかな。そんなことが、もしこのドキュメンタリーの中で表現できていたらうれしいなと思います」とアピールしていました。

最後に、崔監督が、ナレーションを担当した樹木希林さんから掛けてもらった言葉を教えてくださいました。「希林さんはいみじくも、『崔さん、私の最後のナレーションよ』と言ってくださいました。なおかつ機嫌よくスタジオを出ていかれたことを、非常に強い印象として残っています。感謝しております」と少し鼻をすすりながら、崔監督は在りし日の樹木さんを偲んでいるようでした。

少しの間静寂が訪れ、「しばらくご歓談をお願いします。上映会でシーンとなっているのは本意じゃない。最後はロックコンサートのフィナーレみたいに終わりたい。また京都、必ず来たいと思います」と内田さん。さらに「自分のポリシーと夢を曲げないで、やり続けたいと思っています。スタッフも本当にいい人ばかりで感謝しています。本当にありがとうございました」と、力強いメッセージを残しました。そして内田裕也さんと崔洋一監督は、万雷の拍手とファンからの温かい声援を受け、劇場を後にしました。

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