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中島貞夫監督共同企画「映画と工芸」トークショーを京都美術工芸大学 京都東山キャンパスで開催

2018年10月13日(土) レポート

日本映画界の巨匠、中島貞夫監督。京都国際映画祭実行委員会 名誉実行委員長でもある中島監督ですが、今回の映画祭では20年ぶりとなる長編新作「多十郎殉愛記」がワールドプレミア。さらに中島監督の時代劇作品をテーマにした学生とのコラボレーション企画『ザ・チェア - 中島監督へのオマージュ』が、京都美術工芸大学 京都東山キャンパスで開催され、注目を集めています。10月13日(土)には、同会場に中島監督、永楽屋14世細辻伊兵衛さんを迎え、中島貞夫監督共同企画「映画と工芸」トークショーも行われました。

そして中島監督が登壇。会場は大きな拍手に包まれます。監督はステージに置かれた椅子に腰掛けると「座り心地がいい」とにっこり。この椅子の作者にはまた後ほど触れるということで、まず『多十郎殉愛記』について、監督の経験すべてを次世代の役者、スタッフに継承した作品と説明、明日の祇園花月で京都国際映画祭2018のクロージングとして初お披露目されることを伝えました。

ここからトークがスタート。中島監督は、まず「最近時代劇が映画に姿を表さない」と話したあと、京都は映画が日本で初めて作られた場所であること、京都で初めて映画が流されたときのこと、その内容、映画の歴史などについてトーク。日本映画創生期の貴重なエピソードも満載で、詰めかけた観客も監督の話しに聞き入っていました。

そして、今回、京都美術工芸大学の学生の皆さんが、『多十郎殉愛記』をテーマにした作品を作ったとのことで、ステージに置かれている作品を実際に制作した川北英教授と学生の田中茉裕さん、竹内佑美香さん、岩田二郎さんが登壇します。

今回の企画は、元々学生たちが椅子の制作をしていることを知ったけんたが、監督の椅子を作ったらどうなるんだろう、と依頼したとのこと。川北教授は、今回椅子を作る授業という形にしたこと、安価な1枚のベニヤ板で1脚の椅子を作るというテーマで行ったことを説明しました。そしてここで、中島監督が座った椅子を作ったのは川北教授であることが判明。その立派な造りにけんたは「金かけてませんか?」と疑惑のツッコミで笑いを取ります。

教授は、映画、チャンバラなどをイメージしてディスカッションしたそうですが、映画作りにおける監督のポジションを考え、偉そうにしているんじゃないかと、この作品『不動明王』を作ったと解説しました。それを聞いた監督も「ここに座っているとお不動さんになったような気持ちになってくる」と笑わせます。

学生の皆さんは、田中さんが『殺陣』、竹内さんが『動』、岩田さんが『一刀両断』という、それぞれがイメージを膨らませて作り上げた作品を披露。コンセプトやデザインの意味など、各自の詳細な説明を聞いた監督は「ものを作るということはそういうことだと思う、素晴らしい」と絶賛、実際に腰を下ろして「いいですね」「感激しています」とコメントするなど、作品に大満足の様子でした。

続いて第二部。日本最古の綿布商、永楽屋14世細辻伊兵衛さんが登壇します。『多十郎殉愛記』で主役を務める高良健吾さんがスタッフに手ぬぐいをプレゼントしたそうで、それが永楽屋さんのものだったとのこと。実際にその手ぬぐいがステージでお披露目されました。監督は「この役にどうやって入るかずいぶん考えたと思う」と高良さんについて語り、手ぬぐいに描かれた夏みかんについても説明しました。そして、永楽屋さんの歴史から「継承」をテーマにしたトークがスタート。監督は『継承』について、京都の主流であった時代劇に関して言えば、そういうものが持つ意味が大きい、演技や小道具などもきちんと継承していくことで時代が表現される、演じる人もそういうものを着ることで気持ちが入ると話しました。そして、何か新しいことをやろうとするとき、古いものを無視するのではなく、本質を崩してはいけないと熱弁。『多十郎殉愛記』についても、時代劇がやりたいだけでなく、そこに詰まっているいろんなものを伝えていかなくちゃいけないと語りました。さらに、ただカッコいいだけがチャンバラじゃない、生きるか死ぬか、日本人の死生観が出てくるとも。

最後はけんたが改めて、ワールドプレミアが明日行われることを告げ、上映は来春になるものの、ひとつだけ見せられるものがあると話すと、ステージに日本刀が描かれた手ぬぐいが登場。これは永楽屋さんが京都国際映画祭限定で300枚だけ作ったもので、祇園花月、元淳風小学校、岡崎公園の3ヶ所で11日から販売されていると説明。明日の祇園花月でも販売されることを伝え、トークショーは終了しました。

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