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『京都国際映画祭2018』の「クリエイターズ・ファクトリー」、最優秀賞は『春』の大森歩監督が受賞! アート部門、子ども部門も優秀賞を発表!

2018年10月13日(土) レポート

10月13日(土)、イオンモール京都桂川にて、「クリエイターズ・ファクトリー」授賞式が行われました。

「クリエイターズ・ファクトリー」とは、第5回沖縄国際映画祭より新たに創設された部門で、映像文化における〝次世代を担う人材、才能〞を発掘する公募型のプロジェクトです。京都国際映画祭では、それをさらに発展させ、映像分野だけではなく、アートの分野からも幅広いジャンルのクリエイターの皆様の参加を募っています。そして、本プロジェクトの実施を通して、映像、音楽、絵画、写真、アニメ、CG、ファッション、工芸など様々なジャンルのクリエイターが表現できる場を作り、才能あるクリエイターの発掘、育成を目指し、世界に発信していきたいと考えています。

映像以外のアート作品としては、絵画、工芸、写真、立体造形など多岐にわたるジャンルが応募対象となり、子どもたちの自由な発想から生まれるアートを対象とした「子ども部門」も引き続き開催します。全応募者を対象に予備審査選考が行われ、映画部門の審査通過作品は京都国際映画祭会場での上映を、またアート部門・子ども部門の審査通過者作品は「元淳風小学校」での展示をそれぞれ行いました。

審査員は、春日太一さん(映画史研究家)、天明晃太郎さん(放送作家)、松崎健夫さん(映画評論家)、中井圭さん(映画解説者)、古賀俊輔さん(映像プロデューサー/株式会社ザフール 代表取締役)の5名が務めました。

授賞式のMCを務めたのはザ・プラン9のお~い!久馬です。発表の前に春日さんが今年の審査について言及されました。「優秀賞は3本予定の予定でしたが、今年は2本になりました。審査員の皆さんとギリギリまで話し合い、賛否両論もありました。これから発表する2本は確実に優秀賞と言えるだろうと思いましたが、あとの1本がなかなか難しかったです」と、過去2年の作品は満場一致で決まったものの、今年は難航したとのこと。ですが、「1本1本の作品に対して時間をかけて、意見をぶつけあって審査した結果です」と続けられました。

いよいよ発表です。まずは観客賞を古賀さんが発表しました。ご来場くださった観客の皆様の投票で選ばれる観客賞は、『wind chime』の緑茶麻悠監督が受賞しました。

<受賞者コメント>
クリエイターズ・ファクトリー観客賞
『wind chime』 緑茶麻悠監督

「今日は作品をご覧いただいて、票も入れていただいてうれしく思います。上映が大きいスクリーンだったので緊張しました。私は京都出身なので、『京都国際映画祭』で選んでいただき光栄です」



優秀賞、1本目は天明さんが発表されました。1本目の優秀賞は『春』大森歩監督です。大森監督は欠席のため、穴久保プロデューサーが代理で登壇されました。2本目は松崎さんより発表され、『ZOB』の竹中貞人監督が受賞しました。

<受賞者コメント>
クリエイターズ・ファクトリー優秀賞
『春』大森歩監督(代理:穴久保亮プロデューサー)
「優秀賞を受賞したことを監督に電話します。僕よりも監督がダイレクトに言いたいことがたくさんあると思います!」

<受賞者コメント>
クリエイターズ・ファクトリー優秀賞
『ZOB』竹中貞人監督
「『ZOB』自体は長編を見越したパイロットフィルムとして製作しました。長編の内容をぎゅっとした凝縮した短編ではありますが、プロデューサーから“ゾンビ映画を撮りたい”と提案があり、この時期に大丈夫か?と思ったのですが、一線を画すために血が出ないものにして、長編の企画書の中身をかいつまんで撮った短編です。いろんなトラブルに巻き込まれながら撮影しましたが、日の目を見ることができてうれしいです。ありがとうございました」。

 

そして最優秀賞の発表です。最優秀賞は、「クリエイターズ・ファクトリー」の応募作品すべてを審査されている春日さんから発表されました。

エンターテイメント映像部門最優秀賞は大森監督『春』に決定しました。

<受賞者コメント>
クリエイターズ・ファクトリー最優秀賞
『春』大森歩監督(代理:穴久保亮プロデューサー)
「最優秀賞が優秀賞の中から選ばれるとは知らなかったので、びっくりしています。普段、僕と監督はCMを作っているのですが、今回、初めて映画を作りました。初めてのことだらけで監督と何回もケンカして、何回も泣いたりして、苦労した作品なので、報われてうれしいです。今、監督もすごくやる気があるので、受賞を機に製作欲をさらに駆り立てて、“最優秀賞を受賞したけど審査員の皆さんの意見は厳しかったですよ”と伝えて、もう1本、いいものを作りましょうと伝えます!」

 

 

審査員評では、「朝から12本、観させていただきましたが、それぞれ切り口が面白くてさすがだな、最後の12本であることは間違いないと思いましたが、私はプロデューサーとして映画を作っているプロなので、その立場で今後、飛躍できるであろう人を選びました。映画は観てもらって初めて映画になります。今日、12作品が上映されたということで、映画として成立したことを忘れないでください」と古賀さん。

天明さんは「どの作品がいいかずっと議論をしていて、春日さんからもありましたが、毎年、早くから決まっているのに、ここまで話し合ったのは今回が初めてでした。『春』は僕も大好きな作品で、意見が分かれるところもありましたが、全員に共通した意見は『春』の長編が見たいということでした。短編における四季の描き方が十二分に発揮できなかったところが、論議の最大点でした」と明かされました。「『ZOB』はかなり評価が高かったのですが、時間の構成でこの部分が必要だったのかなど細かい部分での話が多くありました。細かい話が出来るというのは、それだけ作品のクオリティが高かったということです」とコメント。観客賞の『wind chime』は「観客の方に評価されることはすばらしいことです。優秀賞の候補に最後まで残ったのは緑茶監督の作品でした。観客賞については優秀賞を決定した後に聞こうということになり、緑茶監督の作品が選ばれたと聞いて本当によかったと思いました」と語られました。

松崎さんは「総評というか僕の感想ですが、3度目の『京都国際映画祭』の参加で、年を経るごとにクオリティが高くなっています。他のコンテストの審査もしていますが、全体的に映画の質が高くなっています。ただ、機材の向上によって完成度の高いものが出来ていますが、作家の個性が際立っているかというと疑問があるところです。今回の12本は、総じてアイデアは他の自主映画と比べて突出したものでしたが、今の社会と照らし合わせた上で落としどころを見たとき、このテーマはどういうふうに見て行くのかという視点できっちり書けているのかと審査でも悩みました。世の中に訴えかけたい熱はあったので、今回はこういう結果になりました」と率直なご意見を述べられました。

『京都国際映画祭』クリエイターズ・ファクトリー2回目の参加となる中井さんは、「今年は意見が割れに割れました」と第一声。「去年はわりとバシッと決まって、好みは違うけど分かれることはなかったなという印象でした。また、今回勉強になったのは尺です。8分程度の短い作品、長いものでも30分強でしたが、その尺に合ったものを作っているかどうかは大きなポイントだったと思います。その尺を使って描くテーマはこれが正しいのか、一度再考されるといいと思います。『春』は長編で観たい作品で、正直、この尺では100点はあげられないと思いましたが、長編になったら面白くなるのではないかという期待を込めました。尺のバランスを考えた方がいいと今回、改めて思いました」と具体的なアドバイスもされました。

最後は春日さんの総評です。「優秀賞はこのお三方の作品と、田中大貴監督の『FILAMENT』を入れるべきか議論しましたが、僕個人としては、ここで何かの賞を出すことによって田中監督に“これでいいんだ”と思ってほしくないという思いがあったので、あえて外しました」と審査の詳細を。個々の作品については、「『wind chime』は高く評価した作品です。映像でピンボケがありましたが、あれは意図的なのか気になりましたが、90本、100本と作品が送られてくる中で、これだけの緊張感を保っているのはすばらしい。役者の演出もすばらしいと思いました。『ZOB』は尺の部分で、“これがあるなら、ここまでいかないといけないのではないか”という見る側の消化不良を招く部分もありました。今の段階でゾンビ映画をとおっしゃっていましたが、そこのアプローチをやられたのは納得のいくものでした。『春』は早い段階からこれでいいかなと思っていました。他の方々も同じ意見でしたが、一番大きな違いは編集です。落選した作品は編集がゆるく、テンポが悪い。編集でリズムが一番大事で、監督のセンスが一番出るところでもあります。『春』は冒頭からセンスのある演出でとてもよかったと思います」と語られました。

また、「この映画祭ではチャレンジしてきた人達に対して同じ評価であるなら上映の機会をあげたいと思って、最初の審査をすべて僕がやってきました。その中で、クオリティがとんでもない作品というものはありませんでした。エンターテイメントとして面白い作品を作っていくという『京都国際映画祭』のメッセージにもあるように、この映画祭じゃないとかけられないものがあります。『京都国際映画祭』のクリエイターズ・ファクトリーを選んでくださってありがとうございます」と謝辞も述べられました。

「アート部門」は、絵画や立体造形、映像作品も含む様々なジャンルのアーティストによる応募が可能で。15歳以下の子どもたちの自由な発想から生まれた作品を対象とする「子ども部門」も絵画作品、立体作品ともに幅広く募集しました。応募作品は予備審査を行い、通過した作品を本映画祭アート会場にて展示し、審査員が審査。展示作品の中からクリエイターズ・ファクトリー優秀賞を選出しました。優秀賞受賞者には、アート部門優秀賞に賞金50万円が、子ども部門優秀賞に表彰状と賞品が、子ども部門予備審査通過者には参加賞と記念品が贈られます。審査員は、玉置泰紀さん(株式会社KADOKAWA 2021年室エグゼクティブプロデューサー担当部長/京都市埋蔵文化財研究所理事)、森裕一さん(MORI YU GALLERY 代表取締役/ART OSAKA 実行委員長)、山本麻紀子さん(アーティスト)が務めました。

 

アート部門 優秀賞は隋行奏子(ズイギョウカナコ)さんの「あなたのような わたしのような」が、子ども部門 優秀賞は川勝友萌(カワカツユメ)さんの「繋ぐ」が受賞しました。

<受賞者コメント>
アート部門 優秀賞
隋行奏子「あなたのような わたしのような」
「元淳風小学校で楠のみを使って彫った人体を展示しています。今回の作品は、考え方も作り方も今までとがらりと変えた作品になりましので、このような賞をいただいて光栄に思います。ありがとうございました」

 <受賞者コメント>

子ども部門 優秀賞
川勝友萌「繋ぐ」
「私には弟がいて、この作品は弟のかわいい感じ、小さい感じを絵に残したくて描きました」

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