ニュース全ニュース

芸人が活弁に挑む! 「笑いと言葉で魅せるサイレントコンビ芸/笑いで甦る「京都ニュース」 produce by 立川直樹、片岡一郎」

2018年10月13日(土) レポート

10月13日(土)、大江能楽堂では「笑いと言葉で魅せるサイレントコンビ芸/笑いで甦る「京都ニュース」 produce by 立川直樹、片岡一郎」と題して、芸人たちが活弁に挑戦しました。第1部では、活弁士・片岡一郎さんと組んで中山功太が『弥次喜多 尊王の巻』『ローレル&ハーディのリバティ』で活弁初体験。第2部では、芸人たちが「京都ニュース」の映像で活弁に挑みます。

MCは学天即。まずは出演者の、プロデューサー・立川直樹さん、活弁士・片岡一郎さん、中山功太、パーカッション演奏の鳥飼りょうさん、ピアノ演奏の上屋安由美さんを舞台に招きます。「第1部、珍しい企画だと思うのですが」と奥田から振られた立川さんは「相当、面白いと思います」と会場の期待値を高めます。隣にいた活弁士の片岡さんも「相当面白いと思います」と自ら煽ります。ここまで強気ムードの流れですが、中山は「1回しかリハーサルできてません。もうひとつの作品は、リハーサルもできていません。片山さんの胸を借りるつもりでやります」と、立川さん&片岡さんが上げまくったハードルを必死で下げます。

まずは、片岡さんが明治元年から今年が150年目に当たるのにちなみ選んだ、幕末が舞台の『弥次喜多 尊王の巻』から。日活時代劇のトップスターであった河部五郎と大河内傳次郎を、あえて三枚目役で主演させた時代喜劇映画です。大河内傳次郎の役柄を中山功太が担当します。倒幕思想の疑いから弥次さん、喜多さんが役人に捕らえられそうになっているところを、身代りになった勤皇志士・安田を救出するお話です。軽妙なタッチでテンポよく動き回る登場人物たちに合わせ、片岡さんと中山が代わる代わるセリフを付け、2人ならではのリズムを作り上げていきます。

上演を終えた中山は、「途中から、何を言うてるかわからんようになりますね。大きいミスで25個ありました」と反省しながら「漫才やピン芸と比べても、活弁はどんなしゃべりよりも早いんじゃないですかね」と分析し初活弁を振り返りました。「貴重な経験をさせていただきまして……」と中山が締めに入ろうとすると、「終わったように言わないでくださいよ。もう1本、我々やらなきゃいけない」と片岡さんがツッコミます。

次は、『ローレル&ハーディのリバティ』です。チャップリンやバスター・キートンと並ぶコメディ俳優として活躍した、小柄で細身のスタン・ローレルと大柄でがっしりした体格のオリバー・ハーディのコンビ。太刀川さんは、「人間の身体能力はこんなにすごいのか」とCGに頼らないアクションが見どころだと言います。

いよいよ上映、の前に中山は「台本2枚で、上映が約20分。読み合わせゼロなんですよ。僕、怖い夢見てるみたい」と、またしてもハードルを下げる発言。「音楽と合わせるのも、今日はじめてですから。スリルとサスペンスですよ」と立川さんは妙な緊張感を煽ります。

ローレル&ハーディの2人の脱獄シーンからスタート。うまく逃げ果せたものの、警官に出くわすとジタバタしてしまう彼ら。そんなこんなで建設中のビルの鉄骨で右往左往するハメになってしまいます。セリフの多くはアドリブのため、思わず片岡さんが「何か言って」と促してしまった中山無言のシーンが起きたり、「高いとこのシーンが長いね」とセリフに中山が本音を織り交ぜるので、お客さんから笑い声が巻き起こります。

実演後、片岡さんは「我々、ずっとアドリブですから、高い所よりハラハラしました」と緊張していたのを明かし、中山は「高いシーン7分ぐらいあったんですけど、昨日、うなされながら寝ましたわ」と今日までいかに不安だったかを訴えグッタリ。そんな二人に立川さんは「一郎&功太のコンビできますよ」と賛辞を惜しみませんでした。

続いての第2部は、『笑いで甦る「京都ニュース」』ということで1956〜1994年の間に作られた244本の京都のニュース映像に芸人らが声を当てていきます。参加者のさや香、祇園、堀川絵美が登場し、「片岡さんと面白そうなのを選びました。(面白度が)すごいです」と立川さんがハードルを上げる中での挑戦です。最初にオリジナルを観てから、それぞれの芸人が声を入れていくスタイルで進行します。

1人目は、さや香・石井。「暴力追放運動で見回りをする警察官たち」を、「NSC勧誘の実態」に塗り替えました。

2人目は、さや香・新山。「深夜パトロールする警官たち」を「電話線修理できる人探しに奔走する警官たち」に変換。

3人目は、祇園・櫻井。「愛犬スナップ集」を「犬が支配する地球」とSFテイストに。

4人目は、祇園・木﨑。「クラクションを鳴らさない街づくり」を「木﨑に憧れる人々の街」にすり替え。

5人目は、昨年度の芸人活弁グランプリ優勝者・堀川絵美。「花嫁ショー」を「バチェラー・ジャパン」風に仕立てました。

せっかくなのでコンビ弁士もやってみようと、さや香に白羽の矢が飛びます。「酒どころ伏見の酒蔵の日常」が「30年後、さや香再結成物語」として新たな映像作品が誕生していました。続いて、祇園も挑戦。内田吐夢監督、中村玉緒さんら銀幕のスターが集結した「京都市民映画祭の表彰式」を「実写版アンパンマンの記者会見」へと方向転換。ここまで見守っていた学天即もトライします。岩下志麻さん、若尾文子さんら大御所の若かりし頃の姿が収められたバージョンの「京都市民映画祭」を「第1回アダルトビデオ大賞」としてしまい、客席の女性は引き気味に。片岡さんからも「困ると下ネタはよくないと思う」とたしなめられてしまいます。そんな空気を払拭すべく、堀川が再トライ。「マイカーと駐車場」を市川悦子さん調で崩さす再現し、オペラの代表曲トゥーランドット「誰も寝てはならぬ」を高らかに歌い上げ終了。上演中は笑い声が絶え間なく上がり、お客さんは頬を緩ませながら芸人ならではの活弁付き上映を堪能していました。

全てのプログラムを終え、プロデューサーである立川さんは、「今日、芸人さんの底力を見ました。思った以上にすごく面白かった。新しいひとつのエンターテイメントになっている感じ」と、企画成功の手応えを感じた様子。「サイレント映画・ニュース映像に芸人さんによる活弁を付けるアイデアがこんなに面白くなったのは、みなさんのおかげです」と、出演者のみなさんに感謝を示していました。

  • Facebookでシェア
  • Twitterでシェア
Close